この度、おかげさまをもちまして「The ONE」が再演される運びと相成りました。これも、皆様の並々ならぬお力添えの賜物でございます。前回公演の千秋楽が桜の開花時期を2週間も早め、劇場を出ると綺麗な桜が風に舞っていたのを思い出します。
本作は、数あるサウンドシアター作品の中でも再演の声が多かったものの一つでございます。この幕末というのは、海外で言えばフランス革命やロシア革命に相当する近代化へ向けての革命期でした。それまでいた王族が消え去り、誰しもが国民となった。それは新時代へ向けての高揚感をもたらしたのと同時に、拭い去れない過去の「亡霊」を人々の心に宿してしまいました。そりゃそうですね。「明日からアナタは侍じゃありません」と言われたところで、「他の何になればいい?」と戸惑ったことでしょう。この物語の主人公は、廃刀令前夜、サムライが完全にこの世から消え去る直前、最後にサムライとしての責務を果たさなくてはならなくなります。時代劇のようですが、これは私たちの物語でもあります。拭い去れない過去の亡霊、過去の方が素晴らしかったと思わせる何か、未来へ一歩踏み出すことを許さない足かせ。これは私たちの心にも存在する亡霊なんですね。この物語を書いたとき、難しすぎるテーマかなとも思いましたが、このように皆様に受け入れられ再演のお声をいただきましたこと、ただただ感謝です。
・・・・ところで皆様。
新選組の近藤勇、土方歳三、沖田総司などが習得していた剣術の流派である天然理心流。この平成の時代まで受け継がれ存続しているとご存知でしたか? この度、「The ONE」と天然理心流試衛館のコラボレーションが決定いたしました。幕末、京の都でいったいどのような剣が閃いていたのか、お客様に実際にご覧いただけることとなりました。音楽、言葉そして剣術のコラボレーション。時を超えて現代に息づく幕末の残り香をご堪能ください。また、この度このような挑戦的な舞台へのご出演を快くお引き受けくださいました試衛館の髙鳥天真先生には、この場を借りまして厚く御礼申し上げます。
皆様に最高の桜吹雪をご覧いただけるようキャスト・スタッフ一同努力いたします。それでは劇場でお待ち申し上げております。
原作・脚本・演出 藤沢文翁
天然理心流とは
天然理心流は、寛政年間(1789年~1801年)に近藤内蔵之助が創始した武術で、鹿島神道流を淵源としています。その内容は、剣術、居合術、柔術、棍法(棒術)、活法、気合術等を含む総合武術です。また、幕末期には四代目の近藤勇と、門人の土方歳三、沖田総司、井上源三郎らが京都において「新選組」を結成し、有名な池田屋事件の際には京の町を焼き払う計画を未然に防ぎ、今も残る貴重な文化財を焼失から救ったことでも知られています。
天然理心流試衛館館主 髙鳥天真